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――[4]――
自分たちの教室より三階上の五階図書室。
上履きを脱ぎ、二人は図書室に入る。
入り口にはほかに三組の上履きが脱いであった。
たった三人しかいないのか……。
いつもながらにやりがいのなさを感じる。
入り口横のカウンターには、司書の桑谷先生が座っていた。
月夏たちが入ってきたことに気づくと、
「あとお願いね」と、横の事務室(先生の砦)に引っ込んでしまった。
月夏と冬花は、席に着く前に、カウンター斜め横にある雑誌コーナーから、読むものを一冊取る。
冬花は『詩とメルヘン』。
月夏は『本の雑誌』
『詩とメルヘン』は、ほんわかした絵とともに、詩がいっぱい載っている月一雑誌。
冬花は詩が好きなのだ。
『MY詩集』という雑誌に投稿するくらい。
今月下旬に出る新刊の統一テーマは、「雪」だ。
冬花の好きな雪。
『載ったら持ってくるから読んでよね』
隔月刊誌でけっこう待つのがじれったくもあるけれど、二ヶ月なんて早いものだ。
冬花は、“冬夏”なんていう、どのの季節だかわからないようなペンネームで詩を描いている。
“冬の花”と書くより、“冬と夏”っていうほうが、ギャップがあって好きらしい。
いつものように、二人はカウンターのいすに座って本を広げた。
「またそれ読むの?」
冬花が『本の雑誌』を覗き込む。
「最後まで読み終わってねえんだよ。それにさ、人のこといえるか?」
冬花も月夏も、いつも読むものは決まっているのだ。
「ま、いいんだけどね」
その言葉を最後に、二人の会話はそこで途切れた。
“活字離れ”と世間ではいわれているが、自分で本を読んでいる限り、月夏はそれを感じたことはない。
たしかに、図書室を訪れるのは限られた人だけで、今は月夏と冬花のほかに、三人しかいない。
三人とも、ばらばらに座って本を読んでいる。
一人は髪を二つに結んだ一年生の女の子。
一人は短い髪でメガネをかけた一年生の男の子。
一人は、勉強熱心な三年生の男の先輩。
みんな顔なじみだ。
今日も、少なそうだな。
月夏は窓の外に目をやる。
雪はまだもくもくと降っていて、空は薄暗い。
昼だっていうのに、夕方のようだ。
この降りしきる雪がこの世すべての音を吸い取っているかのように、図書室はもの静か。
斜め横においてあるストーブの音しか聞こえない。
雑誌を読んでいる月夏だったが、ふとさっきのシュウとの会話がフラッシュバックした。
『男子で雪原冬花を名前で呼び捨てるやつなんて、お前だけだぜ?』
『クラスのみんながお前らを公認しているっていうのに、本人たちはわかってねえってことだ』
『本の雑誌』に、恋愛モノの小説の書評が載っていたからだ。
それをなにげなく読んでいたら、ちょっと自分と重なるところがあったのだ。
ちらりと月夏は、冬花を横目で見る。
整えた髪、白くて透き通った肌、まっすぐな瞳。
おそらく誰から見ても、冬花はきれいな人なんだろう。
冬花にあこがれる女子は多い。
男子も多い(たぶん)。
その冬花と月夏のの距離はかなり近い。
唯一、名前で呼びあっているわけだしな。
月夏は思う。
いったいどういうことなんだろう。
シュウがいうとおり、おれらは“付き合っている”に入るのか?
でもだからって、何が変わるってわけじゃない。
いくら冬花が隣に座っていようが、どきどきはしない。
好きなら、“どきどき”ってもんがあるはずだ。
と、そこまで思ったとき、
「何か用?」
冬花が振り向いた。
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