夜盗人



(初回から犯罪者とは……)
 どろぼうさんですよね?
 不思議なものを盗みますね
 何の意味があるのです?
 そもそも、夜を盗もうなんて無理です。
 盗めたとしても、夜明けは必ずやって来ます。

****************************************************


 そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。
 わたしは犯罪者ではありませんから。


 まあ、夜を盗んでいるっていうことについては否定できませんけれども。


 実はわたし、太陽なんです。
 今は人間の姿をしていますが、昼間は空に浮かぶ、あの太陽なんです。
 だからわたしが顔を出すだけで、夜は簡単に盗めるんですよ。


 管理人さんのいう通り、朝は必ずやってきます。
 夜を盗んでも、結局は取り返されちゃいます。


 “星”っていう、イキモノに。
 星って小さく見えるのに,実は大きいでしょ。
 わたしも人のことはいえないんですけど、そのすごさに一歩後ろにさがってしまうというか……


 すみません。わけがわからなくて。


 一番星っていう言葉、知っていますよね。
 どの星たちよりも早く、外に出る星のことです。


 それを見たら、なぜかわたしはあっという間に身を引いちゃうんです。
 どこかに吸いこまれそうになるっていうか、力を失うっていうか、そんな感じになるんです。
 昼間がんばりすぎたおかげで、だんだん体が下がってきちゃうからなんでしょうか。
 わたしが下がりかけるその時間帯、いつもその星さんが顔を出すんですよね。
 不思議なものです。


 しかし、輝き続けるのがわたしの仕事。
 休んでばかりではいられません。
 休憩後は、ちゃんと顔を出します。


 ってなわけで、あとはそのくり返し。
 

 そうですねえ、一度でいいから24時間を達成してみたいです。
 目標があるっていうのは、いいことでしょ。
 それがあるからこそ、毎日こんなに輝いていられるんですよ。
 がんばるぞっていう気になります。


 わたしの夜奪還最高記録は14時間35分。
 けれども、遠くにいる友だちは24時間をかるく越えたっていうんです。
 しかもそれくらい続けられると、不思議な光景が見られるとかなんとか。


 わたしが夜を盗む本当の理由はそこにあります。
 見てみたいんです。


 ――その世界を。


***後日談***


 お話をお聞きしたのは、実は夜中でした。
 昼間はお仕事があるので、この時間にしてほしいといわれたからです。

 そういうことだったのですね。

 お話をまとめると、夜盗人さんが目標を達成した暁には夜が来ないっていうことです。

 一日中が昼。
 ずっと明るい日。
 どんな世界なんだろう、暗くならない日って。

 わたしも楽しみにしています。
 一瞬だけ夜が来なかったら困るって思いましたけど、一日くらいならいいかも。
 もし夜盗人さんが成功したら、わたしは何をしようかな。

 寝るなんてもったいないです。

 そうそう、夜盗人さんががんばっている姿を撮影させていただきました。
 下の写真がそれです。  

    

         2004年1月1日 卯月未衣名